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マイカー事故と企業の責任

マイカーでの通勤途中に阿部くんが交通事故。事故後の対応は大丈夫?

総務部長 :  社長、お取込み中すみませんが、よろしいでしょうか。
社   長 :  そんなに慌ててどうしたんだね?
総務部長 :  はい、営業の阿部くんが通勤途中で事故をおこしました。
社   長 :  なんだって!?それで、どんな状況なんだ?
総務部長 :  はい、携帯メールをしている最中に、対向車にぶつかったあげく、飲食店に突っ込んだそうです。
社   長 :  なんてことをしてくれたんだ。すぐに阿部に連絡を取れ!
総務部長 :  実は、警察に身柄を拘束されていて、いまのところは連絡をとることができない状況です。
社   長 :  保険会社には連絡したのか?
総務部長 :  えっ、保険会社ですか?
社   長 :  そうだ、当然連絡したんだろ?
総務部長 :  すみません、阿部くんの保険会社なので、どこに連絡をとっていいものかわかりません。
社   長 :  キミは総務部長だろう!そんなことも管理していないのか!いったいキミの仕事はなんだと思っているんだ!わかった、大至急、家族に連絡をとりなさい。
1.マイカー事故と企業責任
電車・バス等の交通機関が不便であったり、日常の営業や配達等、通勤や業務の遂行にあたって従業員にマイカーを使用させるケースは少なくない。ところで、こうしたマイカー使用中に事故が発生した場合、企業の責任はどうなるのであろうか?
交通事故を起こした場合、刑事上、行政上、民事上の責任が生じるが、その責任は運転者のみならず、その使用者である企業も負うことがある。
通常、企業が負うのは民事責任で、民法上の「使用者責任」と自動車損害賠償保障法上の「運行供用者責任」がある。平たく言えば、金銭面での損害賠償責任のことである。
近年、交通事故の件数自体は減少しているものの、その賠償金額については1億円を超えるケースも珍しくなくなっている。社員の交通事故が、企業経営に重大な支障を与えるリスクは、かえって高まっているといえよう。
2.ケース別にみる企業責任の有無
①業務等でマイカー使用を認めているケース
⇒会社に責任がある
②通勤・業務でのマイカー使用を一切禁止し、実際に順守しているケース
⇒会社に責任はない
③通勤のみにマイカー使用を認め、これを順守しているケース
⇒原則、会社に責任はないが、実際には責任を負わされることがある。
例えば、マイカー通勤者に対して、ガソリン代・駐車場代・保険料といった実費を支払っている場合等では、マイカー通勤に対して積極的との解釈がなされ、企業が運行供用者責任を過去の判例もある。
ここでのポイントは、マイカー通勤者に支払う通勤費にある。会社としては、電車・バス等公共交通機関の代わりにやむを得ずマイカー使用を認めているという状態とすべきであって、単純に実費を支給するのではなく、公共交通機関を利用した場合の金額を参考に支給金額を決めることが重要となる。
なお、通勤のみにマイカー使用を認めているはずが、実際には業務でも使用、これを会社が黙認しているケースでは、当然ながら、企業の運行供用者責任が問われることになるので注意しなければならない。
3.マイカー使用管理のポイント
従業員のマイカー使用から生じる企業リスクを回避・防止するためには、マイカー通勤規程及び業務使用規程を作成し、厳格に運用することが大切である。
  • (1)マイカー通勤規程のポイント
        ①原則禁止を明確にするために、「マイカー通勤許可申請書兼誓約書」による申請(車種・車両番号・免許証・車検証・
           運転記録証明書※1・保険事項・通勤経路等)を行わせ、許可及び安全運転の誓約をさせる。
        ②任意保険の加入を義務付けるとともに、保険金額も明確に定め、加入できない従業員にはマイカー使用を認めない。
        ③マイカー通勤者に対して、公共交通機関を使用している通勤者に準じた通勤費を定める。
  • (2)マイカー業務使用規程のポイント
        ①マイカー通勤規程と同じく、許可制にし、かつ、日報管理(行先・目的・出発時刻・帰着時刻・走行距離等)を提出させる。
        ②事故窓口を会社に一本化し、一貫して適切な対応ができるような体制を整える。
  • (3)休職期間は、自社で可能な長さを設定する。また、勤続年数による期間の長短を設けたほうが望ましい。
        モデル例では、一律「  年以内」としているが、中小企業では、役所や大企業のような長期の休職期間を設ける余裕はない。
        自社にとって許容可能な期間を検討し、貢献度に応じて設定すべきである。貢献度に応じてということであれば、勤続1年
        未満の従業員を休職制度から除外するのも当然といえよう。
  • (4)復職を認めるかどうかの権利が会社側にあることがわかるように作成する。
        モデル例では、「原則として元の職務に復帰させる」とあるが、これでは復職させるのが当然と解釈でき、会社側に復職許可の
        権利が十分にあるとはいえない。正しくは、「休職中の従業員が復職を希望する場合には、所定の手続きにより会社に願い出
        なければならない」とし、できるだけ復職のハードルを上げておくことが必要である。
        精神疾患のケースは特に質が悪いので、休職期間満了とともに当然に退職してもらう流れを規定化しておくことが重要である。
※1:過去5年、3年、1年間の交通違反、交通事故、運転免許の行政処分の記録について証明(自動車安全運転センター)している。
4.任意保険の盲点
従業員が個人で任意保険に加入する際、その「使用目的」には十分に注意しなければならない。例えば、使用目的を「通勤」としながら「業務」で使用していたり、「日常・レジャー「としながら「通勤」で使用しているケースである。いざという時は告知義務違反を問われ、保険金が支払われない可能性がある。あわせて年齢制限、免許証の色など、事実と異なる契約となっていないかどうかも注意すべきである。会社側としても年に1度の契約内容等の確認実施を怠ってはならない。
従業員のマイカー使用は会社にとっても便利であるがゆえに、相当の企業責任があることを十分に留意してほしい。

※POINT

  • 従業員のマイカー使用では、事故発生時の企業責任が避けられないことを前提に、マイカー使用管理を徹底することが大切である。
  • 原則、通勤事故の企業責任はないが、通勤費に内容次第では企業責任も問われ得る。
  • 従業員個人の自動車任意保険では、使用目的等に間違いがないよう、厳しく注意するとともに会社側の内容確認を怠ってはならない。

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